以前は英語で抄録を書く、スライドを作成するのは国際学会が主で、国内学会では日本語中心でしたが、最近の学会では国際化を鑑みて、英語での抄録提出や電子ポスター(cypos、Epos)登録、口述での英語発表が推奨されるようになってきました。
しかし、従来から英語に触れている方々や指導者がいる施設なら大丈夫でしょうが、英語に触れる機会の少ない、指導者のいない施設の人間にとっては、かなりの労力を割くこととなります。
そこで今回は、そんな悩みを解決するのに役立つツールを紹介したいと思います。
ツール紹介の前に:業者に丸投げ(日⇒英:翻訳)はおすすめしない!
数々のツールを紹介する前に、英語校正会社に丸投げ(日⇒英:翻訳)すればよいのでは?と考える方もいると思いますが、この方法はおすすめしません!
理由として、英語校正(英⇒英:校正)と比べ、コストの面で高額になりますし、自分の伝えたい内容と異なった翻訳結果が返ってくることもしばしば(よく?)あるからです。
そのため、返却された文章を1から見直す必要があり、さらに自分の意図と異なっていた場合、英文作成を自分で行い、その英文が正しいか確認を行なうために再度、校正依頼を出すという、手間もコストも割高な本末転倒な結果になるからです。
結局は、まず自分で英文作成し、それを業者に校正依頼するという手順が結果的にコストも手間も少なくなります。
まずは単語を調べたい、そんな時に役立つツール
「英辞郎 on the WEB」
単語がわからない!そんな時はとりあえず「英辞郎 on the WEB」。
アルク運営の辞書・例文サービスです。日常から専門用語まで幅広く網羅しており、使い勝手が良いです。
無料版(英辞郎 on the WEB、英辞郎 on the WEB Pro Lite)と有料版(Pro)があり、両者の違いは以下のようになります。
- 無料版(英辞郎 on the WEB):単語やフレーズ検索。英語からも日本語からも検索可能。ただし、例文の検索結果は表示されない。
- 無料版(英辞郎 on the WEB Pro Lite):単語やフレーズ検索。英語からも日本語からも検索可能。例文検索も可能。
- 有料版:無料版の機能+例文の検索結果が表示される。例文データ数が豊富。
また、無料版と有料版では検索対象となる語彙数が異なり、無料版よりも有料版の方が多くなります。
無料版でもしっかり専門用語がカバーされているので、十分だと思います。
特に登録は必要ですが、無料版の英辞郎 on the WEB Pro Liteは例文検索も可能なので、個人的にはこれで十分だと思います。
論文を書く参考に、より多くの例文を見たい!という方は、有料版(月額300円、年額3300円:税別)にすると、多くの専門用語を含んだ例文を見ることができます。
論文の例文や表現を検索する際に役立つツール3選
Hyper Collocation
arXivの論文から例文検索するシステムです。
専門用語を含む例文や言い回しのパターンを知りたい場合に有用で、検索語(単語)の前後に使われる言葉を頻度順に表示するため、単語の用法で迷った時に有用です。
arXivは物理学や数学、コンピューター科学、数理ファイナンス、統計学、経済学などの分野の論文が公開されています。
そのため、自分の専門分野外でどんな用例があるのか知りたい場合にも役立ちます。
inMeXes
アメリカのNIH提供のPubmedの論文内の表現を検索するシステムです。Hyper Collocationと同じように、検索語(単語)の後に来る単語の頻度を調べることが可能で、専門用語を含む例文や言い回し等を知ることができます。
また、Pubmedは医学・生物学分野の論文が数多く登録されているため、私たち医療従事者にとってはHyper Collocationより、こちらの方が使いやすく、重宝するかと思います。
Academic Phrasebank
発表スライドから論文でよく使われる表現や例文が、導入、参照、方法、結果、考察、結論と各セクションでわかりやすくまとめられています。
例として、表の結果を本文中で記載する場合、どのように書けばよいか調べたい場合、「Reporting Results」→「Referring to data in a table or chart」をクリックすると、以下のように表示されます。
このように、発表や論文でよく使う表現が、セクション別に数多く掲載されており、非常に使いやすく便利です。私もスライド作成や論文作成の際に愛用しています。
論文全体をチェックする際に役立つツール2選
Grammarly
単語や文法だけではなく、文章的に相応しくない表現、使用頻度の高い単語について、その代替案を示すなどもしてくれる、大変素晴らしいソフトです。
無料版は基本的な部分(単語、文法、句読点)が、有料版は文章のスタイル(冗長さ、可読性等)まで改善されます。
私は無料版を使用していますが、かなりの完成度だと思います。
DeepL翻訳
基本的に参考文献(英語論文)を読むのに使用する場合がほとんどです。また、作成した文章の確認に前述のGrammarlyと併用して使用することもあります。
翻訳精度は一昔前より格段に上がっている印象で、参考文献をさっと読みたい時に重宝します。
ただ、日本語から英語に翻訳した場合、1文が長かったり、同じ単語を繰り返し使用したり、受動態が多くなったり(これは作成した日本語原稿が原因の場合もありますが)しますので、注意が必要です。
あくまで自分で作成した英文を大まかに確認するのに使用する程度にとどめるほうが良いと思います。
ツールを使って効率よく作成しよう
英語化は苦手な方にとって、かなりの労力と時間を要します。しかし研究発表や論文は内容が第一です。少しでも研究、内容のまとめ、推敲の時間を確保するためにも、ツールを上手く使って、効率的に英語化していきましょう。
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